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チーム学校への変革「結‐EN」の果たす役割
発達課題や不登校に直面する 東大阪市立義務教育学校 池島学園 (以下 義務教育学校池島学園) 。この現代教育の難題に、『結‐EN』を導入し、生徒指導の幅を広げ、職員連携を強化することで、児童生徒一人ひとりへの支援 の充実に取り組み ました。
その結果、不登校傾向にあった生徒の登校が安定するなどの成果が見られたといいます。
背景には何があったのでしょうか?山口勝也校長先生、佐々木哲人先生、松尾吉章先生が語る導入の軌跡から、 教職員の連携がさらに発展・充実していく教育現場の姿が見えてきます。
先生方の経歴
※略歴および記事内容はインタビュー当時(2025年2月26日)のものです。
山口勝也 校長先生
教員歴29年。11年の中学校教員を経て、教育委員会で生徒指導や小中一貫教育を計9年担当。 義務教育学校 池島学園には開校時から勤務されています。
佐々木哲人 先生
教員歴16年。池島中学校、池島学園で11年務め、2023年度より児童生徒支援コーディネーター。 理科 教員経験もあり、現在は学校全体の生徒指導を担当されています。
松尾吉章 先生
教員歴11年。 東大阪市の中学校で9年間勤務。 担任と学年主任を 6年間 務め、その後3年間 は同校で小中一貫教育コーディネーターとして勤務。義務教育学校 池島学園には2023年度から勤務し、 現在の学年で 8年生の学年主任と担任を2年連続で務められています。
結-EN導入前の課題
発達課題や不登校など複雑な問題を抱えていました。
山口校長先生は、当時の状況について「他校と同様に発達に課題のある児童生徒や生活背景に問題を抱える児童 生徒の問題行動、不登校が増加傾向にありました。
また、昨今の状況として、経験の浅い教職員が多いことで、児童 生徒 への対応にばらつきが生じていることも課題でした」と振り返ります。
義務教育学校池島学園 は、ベテラン教員が豊富な経験に基づいて児童生徒に対応できる一方、経験の浅い教員は、児童生徒の問題の背景にある要因を把握し、適切な支援をするのが難しい場合があること、そして、経験の浅い教員が自信を持って児童生徒に対応できるようになるには時間がかかることを懸念していました。
また、職員会議などで 教員一人ひとりが抱える児童生徒への指導上の悩みについて 情報共有の場は設けていたものの、 どのような情報が共有されるべきか、またその情報がどのように活用されているのかが見えにくい状況 であり、教職員間の連携機能 を高める必要を感じていました。
松尾先生は、生徒指導の複雑さも課題として感じていました。
「発達的な課題、生活背景、非行、不登校など、様々な要因が複雑に絡み合い、解決策を見出すことが難しかった」と言います。客観的な視点からのアプローチが必要だったのです。
結-EN 活用で工夫したこと
使いやすさを重視した環境づくりに取り組みました
こうした課題に対応するため、義務教育学校池島学園では結-ENの導入にあたって多くの工夫を凝らしました。
山口校長先生は、結-ENの82項目のチェックポイントに着目。「客観的なアセスメントが得られるメリットは計り知れない。すべての教職員にとって、児童生徒を多角的に見る視点を学ぶ絶好の機会になると考えました」。
そこで、複数回の研修を実施し、教職員への周知を徹底しました。研修では、システムの操作方法だけでなく、アセスメントの考え方や具体的な活用事例も紹介し、教職員がシステムを効果的に活用できるようサポートしたと話します。
佐々木先生は、システムの使いやすさを追求しました。職員会議で進捗状況を共有するだけでなく、顔写真と教育プラン、それによる児童生徒の変容の記録をセットで一覧表示できるようにしたのです。
特に多くの教員が授業に関わる中学部 では、担任以外の教員も生徒の状況を把握できるようにする必要性を感じていました。
そこで、生徒に関する資料を一覧で見やすくすることで、教職員全体で生徒の情報が共有され、連携した支援が可能になるような仕組みを作りました。多忙な教員が、生徒の情報に素早くアクセスできる環境を整えたのです。
松尾先生は、実践面での工夫に力を入れました。「結-ENで示される教育プランの中から、比較的やりやすいもの、わかりやすいものを選んで実践することから始めた」と言います。
スモールステップで取り組めるプランから実践することで、変化を実感しやすくなり、教員のモチベーション維持にもつながりました。また、複数回入力した生徒のレーダーチャートの変化を見て、指導に役立てるように紹介することで、教職員が指導の効果を実感しやすくなるように工夫しました。
結-EN が役立ったところ
多面的な視点で児童生徒を理解できるようになりました
山口校長 先生 のリーダーシップのもと、学校全体で結-ENの導入・活用を進めた結果、学校現場に多くの変化が見られました。
山口校長先生は、結-ENの最大のメリットとして、客観的なアセスメントに基づいた支援プランニングが可能になったことを挙げています。
専門家を交えたケース会議を頻繁に開くことは難しい中、結-EN によって専門的な視点からの支援計画立案が日常的に可能になったのです。
「全児童生徒(5年生から9年生)に活用し、支援プランが出た場合は職員会議等で共有しています。関わる教職員全員が情報を把握し、指導に活かせるようになりました」。
佐々木先生は情報共有の質的変化を実感しています。多くの教員が授業に関わる中学校では、担任以外の教員も生徒の状況を把握できるようにする必要性を感じていました。
生徒の情報に素早くアクセスできる環境を整え、結‐ENのレーダーチャートで状況変化を教員が可視化できるようになった結果、児童生徒の表面的な言動からは見えにくい学習面などの潜在的な課題に気づけるきっかけになったのです。
松尾先生は「自分の知識と経験による判断と結-ENの客観的なアドバイスが合致することで、児童生徒への対応に自信を持てるようになりました」と語ります。新たな提案に出会うことで、多様な視点や指導法を学ぶ機会にもなっていることがうかがえました。
結-EN 導入後の変化
豊富な教育プランで効果的な支援が可能になりました
結 -EN の活用は、児童生徒の具体的な変化という形で成果を上げました。
松尾先生は、結-ENのプランの一つである『連絡帳を毎日記入する習慣をつける』を、発達に課題のある生徒に実践したところ、生活リズムが安定した事例を紹介します。
支援学級の先生と連携しながら効果を確認し、スモールステップでの成功体験が生徒の自己管理能力向上につながったとのことです。
山口校長先生は、これまでの成果として 結-EN導入後、教職員が児童生徒理解を深め、学校全体で支援する体制が整ったことで、児童生徒の授業への取り組み姿勢が前向きになったり、対人関係における表情が柔らかくなったりするなど、様々な変容が見られるようにな ったと振り返ります。
たとえば不登校傾向にあった生徒が、結-EN情報を参考に継続的な指導をすることで登校状態が安定し、学習への取り組みが改善した事例があったとのことです。
「以前は生徒の問題行動が発生した後、対応に追われることが多かった状況から、生徒の状況を早期に把握し、未然に防ぐための対策を講じることができるようになりました」。
義務教育学校池島学園の事例は、結-ENが児童生徒理解を深め、教職員間の連携を強化し、学校全体の支援体制を充実させる可能性を示しました。
発達課題や不登校など複雑な問題を抱える現代の学校現場において、結-ENは教職員をサポートし、児童生徒の健やかな成長を支える重要なツールとなっているといえるでしょう。
今後の展望
結-ENの導入により 生徒指導面において、 チーム学校としての機能が強化されました。
この勢いをさらに加速させ、地域や家庭との連携を深めながら、児童生徒一人ひとりの成長を支える学校づくりを目指していくとしています。
そして、山口校長先生は、こう締めくくります。
「結-ENは、本校の教育活動に欠かせないツールとなりつつあります。 今後、さらに活用を進め、全ての児童生徒が安心して学校生活を送り、社会で自立していくための力を育むことができるよう、教職員一同で取り組んでいきたいと考えています。」