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多様な児童への対応力を高め、教員の指導力向上を実現
瀬戸市立西陵小学校では、児童一人ひとりへのきめ細かな支援と教員の指導力向上を目指して「結‐EN」を導入しています。弓削恵理子校長先生に、導入の経緯や効果についてお話をうかがいました(※略歴および記事内容はインタビュー当時(2025年1月21日)のものです。)
弓削恵理子校長先生 プロフィール
長年、瀬戸市内の小学校で教諭として勤務し、2018年から、瀬戸市教育委員会に在籍。市教委では、日本語教育や小中一貫教育、GIGAスクールの導入に携わってこられました。3年間の市教委、その後の校長勤務を経て、2024年に西陵小学校に校長として就任されました。
「結‐EN」導入の背景
児童の多様化と若手教員の増加。学校が抱える2つの課題
西陵小学校が「結‐EN」を導入した背景には、学校現場の2つの課題がありました。1つは児童の多様化に伴い、状況や個別性に配慮した教員の対応力が求められていること、もう1つは若手教員の比率の高まりを背景とした教員の指導力の底上げの必要性です。
「学校では毎日いろいろなことが起こっています。最近は特に、様々な点で従来の枠におさまらない児童が増え、それに伴って、対応に困ることも増えました」と弓削先生は振り返ります。多種多様な事情を抱える児童に対して、適切な支援を行うことが求められる状況でした。
その様な背景の中、若手教員の指導力の底上げも喫緊の課題でした。「結‐EN」の導入がこれらの課題解決の糸口になるのではないかと考え、「新たな支援の形を実現することで、学校が抱える課題に的確に対応できる可能性がある」と期待を寄せました。
「結‐EN」導入の決め手
児童理解を深める新たな視点を得られました
「結‐EN」の魅力は、アセスメントの結果から具体的な支援プランが提示される点だと弓削先生は話します。
「以前から児童の特性を把握するためのアセスメントツールはありました。しかし、それらはアセスメント機能のみにとどまり、結果を具体的な支援に繋げるための活用方法が明確ではありませんでした。一方、『結‐EN』はアセスメントの結果に基づいて、児童一人ひとりの課題を明確に示し、さらにその課題に対応するための具体的な支援プランまで提案してくれます。この点が、従来のツールとは大きく異なり、非常に魅力的だと感じました」。
また、「結‐EN」は児童の特性だけでなく、家庭環境なども含めた背景を考慮した視点を提供します。
「これまで、私たち教員は子供たちの行動や学習状況を捉える際、どうしてもその子の特性だけに焦点を当ててしまう傾向がありました。しかし、『結‐EN』のアセスメント項目を通じて、子供たちの生活環境といった背景を深く理解することの重要性にあらためて気づかされました。」
このような多角的な視点は、教員のスキルアップにもつながっています。「結‐EN」を使うことでその視点が養われることを弓削先生は評価しています。
学校への浸透を図る工夫
負担感を減らすことで自然な広がりが生まれました
「結‐EN」を学校に導入する際は、教員の負担感を減らすための工夫も行いました。特別支援コーディネーターから「こんないいところがあるからやってみて」と声をかけ、対象児童を中心にアセスメントを実施しました。
特に若手教員に良い体験をしてもらうための機会を意識しました。「一年目や二年目の若い先生とは、一緒にシステムを触りながら、アセスメント結果について話し合う機会を設け、早く慣れてもらうようしました」と弓削先生は振り返ります。
その結果、「この児童で試してみましょうか」「出席状況が不安定な児童で実施してみましょうか」といった声が自然と上がるようになり、活用する教員が増えていきました。
児童を多角的に捉える重要性・活用による成果
教員・スタッフ間の連携が深まり、よりよい支援が実現しました
「結‐EN」の活用で特に効果を感じているのは、これまで一方向から捉えがちだった児童理解が、より多角的な視点へと広がったことでした。
「『結‐EN』を活用することで、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーだけでなく、教員自ら82項目のアセスメントにもある多角的な視点を取り入れ、より包括的な児童理解が可能になります」。
成功事例も生まれています。言葉遣いに問題がある児童がいてもその原因がわからなかったものの、「結‐EN」でアセスメントをしたところ、その子供の自己肯定感の低さが見えてきたそうです。
そこで積極的に良いところを声かけし、承認されているという体験を積み重ねたところ、児童はすごく笑顔になり、コミュニケーションも上手になったと話します。
また複数の児童に共通した「結‐EN」の提案プランを参考に、教室で「今日のめあて」を見やすく掲示したり、授業の流れを視覚的にわかりやすく表示したりするなどの環境整備を行いました。その結果、教室全体が落ち着き、学習に集中できる環境が整いました。
保護者との連携強化:学校運営における「結‐EN」の活用
「結‐EN」は保護者との面談にも積極的に活用されています。
「『結‐EN』でアセスメントを実施すると、保護者との面談の際、お子さんの状況について『どうしていきましょうか』と具体的な相談ができます。自分一人だけの判断だと、その対応が本当に適切なのか自信が持てないこともありますが、『結‐EN』データに基づいた客観的な情報があれば、自信を持って保護者の方に説明できます。」
さらに、西陵小学校では「結‐EN」を学校の運営システムに組み込む取り組みも始まりました。教育支援委員会も、2024年度は従来のアセスメントと「結‐EN」を併用していますが、2025年度からは「結‐EN」に完全移行する予定だといいます。
また西陵小学校では、児童に関する具体的な支援策を検討するケース会議において、「結‐EN」が重要な役割を果たしています。
「結‐EN」のアセスメント結果を基礎資料として活用することで、参加者全員が児童の教育ニーズを共有し、質の高い議論を行うことが可能となっているのです。
働き方改革への期待と今後の展望
子どもたちと向き合う時間が増えました
「結‐EN」は、教員の働き方改革にも貢献しています。「今まではアセスメントをした後、それを別のシートに書き写すのに時間がかかっていました」。「結‐EN」を導入することで、アセスメント結果を簡単に共有でき、書類作成の時間を削減できます。
また、これまで教員が支援策を考える場合、アセスメント実施によりリアルタイムで具体的な支援方法が提示される「結‐EN」は、教員の思考を制限するのではなく、むしろ多様な視点やアイデアを提供し、より質の高い支援を創造するためのヒントになると捉えています。
さらに「結‐EN」が生徒指導や教育活動のプロセスに組み込まれることで、「結‐EN」がスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーのように学校教育を支える存在となることが期待されています。
最後に弓削先生は、「結‐EN」を活用する上で特に重要だと感じているポイントを3つ挙げてくださいました。
1つ目は、教員の想定とは異なる結果がデータとして示されることで、新たな子どもの一面を発見できるという点です。
2つ目は、支援方法を考える際、「結‐EN」が提案する多様なプランを参考に、教員自身の経験や知識を活かして判断することで、より適切な支援ができる点です。
そして3つ目は、データ入力や書類作成などの時間が大幅に短縮され、結果的に教員の負担軽減につながるという点です。
西陵小学校での「結‐EN」の活用事例は、児童一人ひとりの特性を深く理解し、若手教員の指導スキルを高め、学校全体の支援体制を強化できる可能性を示しています。
現代の学校現場が直面している、多様な背景を持つ児童への対応と、若手教員の指導力向上という二つの課題に対して、「結‐EN」は課題解決に向けた有効な選択肢の一つとして、今後のさらなる活用の広がりが期待されています。