利用者の声

Yui-EN User's Voice 01
岩沼市教育委員会副参事兼指導主事 ※取材当時
加藤 琢也
  • 教育委員会のお声

経験豊富な先生も若手も同じ指導内容を保護者に提案できるようになりました。

岩沼市教育委員会 副参事兼指導主事 加藤琢也氏にお話をうかがいました。

結-ENの導入の経緯やメリット、導入後の変化について、市教育委員会の立場からお話しいただいています。

結-ENの活用を検討されている方、結-ENを導入してみたけれどどのように活用していけばいいかわからないという方、また結-ENについてもっとよく知りたい方も、ぜひ最後までご覧ください。

ご経歴について

2014年3月まで附属小学校・公立小学校で教諭を務め、2014年4月から県教育委員会に配属されました。指導主事として道徳、学力向上、不登校対策、生徒指導、ICT教育を担当し、その後、岩沼市の公立小学校で教頭を務め、2021年4月から岩沼市教育委員会 副参事兼指導主事として従事しています(2024年3月時点)。

結-EN導入前の岩沼市の課題

不登校や発達障害など、特性のある児童生徒が増えていたこと

わたしが岩沼市教育委員に就任した2021年、教育長が一番心を痛めていたのは不登校の児童生徒が増加していることでした。中学校は既に不登校の生徒が多く、さらに小学校でも増加傾向にありました。

そこで、日々の不登校の児童生徒の状況を把握するため、各学校の教頭に毎日データを送ってもらい、レポートを教育長に提出していました。その頃は校務システムを未導入だったので、各学校の教頭が毎朝入力・送信し、わたしがそのデータを昼までに集計していました。

ただ、毎日数値を追って手立てを打っても、不登校の児童生徒数は増加するばかり。不登校の原因の特定も、原因に有効な手立てを打つのも、非常に難しいということを実感しました。

また、発達障害のある児童生徒の増加も懸念されており、それに伴い保護者とのトラブルも増えていたので、児童生徒への適切な支援と保護者との関係改善も大きな課題でした。

結-EN導入の決め手

誰が見ても同じ傾向があると言える、客観的な根拠になる

結-ENのシステムをご紹介いただいたときに感じた一番の魅力は、若手もベテランも関係なく、どの先生が見ても「この子にはこういう傾向がある」という客観的な結果が出るところです。

事実に基づいて設問に回答していくことで対象の児童生徒の傾向が見えてくるので、保護者との面談時に「学校ではこのような傾向がありますが、ご家庭ではどうですか」とお尋ねし、保護者との関係づくりのきっかけになると思いました。

保護者とうまく関係性を築けるかどうかは、どうしても先生によって差が出てしまいます。同じように児童生徒を見取っていたとしても、経験の量や説明のスキルで差が出てしまうのです。結-ENのデータを活用することでその差を埋め、先生方全員に自信を持ってほしいという期待がありました。

ベテランの先生が経験値として持っている暗黙知を形式知に

結-ENは82の設問があり、日常の中で児童生徒を見取るポイントに気付かせてくれます。ベテランの先生たちが蓄積してきた見取りの技術のような、暗黙知を言語化して形式知にしてくれるので、先生方を育てるツールにもなり得るのではないでしょうか。

昔であれば、課題解決のために学年主任が中心となり、保護者と面談して児童生徒の状況を把握する、という十分な時間が取れました。経験の浅い先生はそこからいろいろなことを学べていました。しかし現在ではそれらの時間も学ぶための研修の時間も確保することが難しいので、結-ENがその代替ツールになれるかもしれません。

もちろん若い先生を育てるだけでなく、ベテランの先生方にとってもプラスになります。ベテランの先生方が感覚でやってきたことが結-ENの教育プランとして出てくるので、今までやってきたことは間違っていなかったという自信に繋がります。

結-ENのメリット・導入後の変化

異動先でも同じツールを使えて、進学してもデータを引き継いでいける

市内で先生が異動することは多くあるので、異動先の学校でも先生方が同じツールを使えるというメリットが あります。

また、小学校から中学校にデータを引き継いでいける可能性が高いところも大きなメリットです。結-ENはデータを引き継いでこそ価値が何倍にもなると思うので、使える学校を限定してしまうのはもったいないですね。

別室・別施設に通う児童生徒の支援準備期間が1カ月から1週間に短縮

不登校で別室・別施設に通う子どもたちへの支援開始までの期間が大幅に短縮されたという事例もあります。

岩沼市の場合、結-ENのデータを学校から不登校の子どもたちを支援する「あいるーむ」に事前に共有しています。これにより、やって来る子どもたちの困り感を前もって把握でき、支援開始までがスムーズに進められるようになりました。

結-ENのデータを見ると、その子の困りごとが「学習の遅れ」なのか、「生活リズム」なのか、など明確になります。そのため児童生徒に会う前から適切な支援の検討が可能となり、面談や話し合いもスムーズに進められます。

以前は支援方針を決めるのに1カ月ほどかかっていましたが、今は1週間ほどに短縮されました。お子さんによっては「来る」と言っていても来れないこともありますし、お子さんがあいるーむに来てもお話を聞けないこともあります。そのお子さんとコミュニケーションを取れるようになって、話を聞いて、困り感を把握して、それから支援方針を決めていたので、非常に時間がかかっていました。

お子さんの結-ENのデータを学校から共有することで支援の方針決定が迅速になり、子どもたちが安心して過ごせる環境が整い、自立支援も早期に始められるというのが一番大きなメリットです。

また、県からの指示で不登校児のアセスメントを徹底する必要がありますが、その作成が難しいことも多くて。結-ENはその子の持っている特性や傾向を客観的に把握する手助けとなるので、アセスメントにも非常に有用です。

ケース会議で児童生徒のバックボーンを踏まえて話ができる

不登校や発達障害に関連する支援体制の検討、いじめの対応など、頻繁に行われるケース会議で結-ENの評価結果を共有することにより、参加する先生方全員がその児童生徒のバックボーンを踏まえて話ができるのはとても大きいですね。

例えばいじめがあったとき、加害側の児童生徒の背景には自己肯定感の低さや生活リズムの不安定さだったり、聞き取りや理解する力が足りなかったりなど、何かしらの問題があることがほとんどです。

結-ENのデータをケース会議に参加する先生方全員に共有することで、加害してしまった児童生徒の特性や家庭的な配慮などに気付くことができます。例えば、理解力が不足しているなら、言葉での指導は効果的ではないから別の方法を考えるなど、具体的なサポートを考えることができますね。

結-ENの評価結果からより効果的な支援につながる

また、ベテランの先生だったら、特性のある児童生徒への声かけや指導の仕方は経験で使い分けることができます。衝動性があるとか、視覚優位とか、その子の特性に合った対応を自然とやっていたりします。しかし経験の浅い先生の場合はそれが非常に難しいもの。そんなときに結-ENが活躍します。

評価結果で示された衝動性や視覚優位といった特性の数値をもとに、管理職やベテランの先生からアドバイスをもらい、より効果的な支援を行ったり、保護者へ説明したりと活用できるでしょう。

今後の運用について

結-ENのデータは、中長期で活用することが重要

結-ENの導入から現在まで2年が経ちました。結-ENを通常の取り組みとして定着させるにはさらに時間がかかります。結-ENのメリットを最大限活かすには6年や9年という中長期的な視点が必要です。データを引き継いで良かった、と思えるようなサイクルにまで持っていきたいですね。

そのようなサイクルに至るためには、管理職を中心に結-ENを導入する意義を先生方に理解していただいて、市全体で結-ENを導入することが必要です。そして導入後は、結-ENを活用して先生方の成長を促し、保護者に対して説得力のある説明ができるようになることを目指します。これは学校経営において非常に大きなメリットになるでしょう。

先生方が結-ENの有用性を実感して活用できる環境づくりを

また、学校では担任の先生方に結-ENの有用性を実感し、活用してもらえるような環境づくりも不可欠です。

結-ENを活用した先生は、引き継ぎがスムーズにできることや保護者面談時のバックデータとして活用できることなど、得られるメリットに気づき、82の設問への抵抗感が小さくなっていきます

初めは82の設問が負担に感じるかもしれないので、理想の状況に到達するような使い方を校長先生にご指示いただいて、活用の場面を増やしていくことも大切です。


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